2024年は基本法が採択されて75周年
2024年5月24日 文・高松平藏(ドイツ在住ジャーナリスト)
地方の末端にまで適用されているデモクラシー
強制されず、自己決定で参加する組織が「クラブ」だ。
この観点からデモクラシー国家とは「デモクラシークラブ」と呼べるだろう。市民が自己決定でデモクラシーに参加し、「メンバー」は自由に意見を表明し、共通善を考えながら妥協点を探すプロセスを持っている。つまりデモクラシーは「共生」のための制度だ。
ドイツの憲法にあたる「基本法」は、このデモクラシークラブの維持・促進のための装置と言える。だから、自己決定でデモクラシークラブに参加する人を増やすために、学校や文化政策などで学習する取り組みが地方の末端にまで整備されている。また、非営利団体などは顕著だが、運営方法は民主的で、それを「自己像」として文書化するなどで強調している。
つまり国家が定めている方法があらゆるところまで適用されているということである。
基本法は67回改正されている
しかし、完璧なデモクラシーなどあるはずもなく、これまでもデモクラシーが破壊される危険性が出たり、脆弱性が見つかった。その度に堅牢化を図らねばならない。
基本法は戦後67回の改正が行われている。全てがデモクラシーのための改正というわけではないが、完璧なデモクラシーはないことが前提になっていると理解できるだろう。
一方、基本法の改正と言っても、ドイツがデモクラシー国家であることは変えることがない。さらに法の支配、連邦制、人間の尊厳の不可侵といった基本的な原則や価値観はそのまま。というかそこは変更できないようになっている。(永久条項)
5月23日、筆者が住むエアランゲン市役所で国旗が掲揚された。1949年に基本法が採択され効力を持った日を記念するもので、バイエルン州の公的機関で行われる。とりわけ今年は75周年の記念の年だ。ポピュリズムの台頭で「デモクラシークラブ」も危機にさらされているが、それに対する抵抗も強い。
「クラブ」の健全性や存続はメンバー(=市民)次第である。(了)
著書紹介(詳しくはこちら)
こうやって、デモクラシーが促進される。スポーツからの視点
執筆者:高松平藏(たかまつ へいぞう)
ドイツ在住ジャーナリストで当サイトの主宰者。 著書に「ドイツの地方都市はなぜクリエイティブなのか」など。
2020年には「ドイツのスポーツ都市」 (学芸出版 3月)、「ドイツの学校には なぜ『部活』がないのか」(晃洋書房 11月)を出版。一時帰国では講演・講義、またドイツでも研修プログラム「インターローカルスクール」を主宰している。プロフィール詳細はこちら。また講演や原稿依頼等はこちらを御覧ください。