アメリカ社会の肌触りとは?
長電話対談
西村仁志(広島修道大学教授)
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高松平藏(ドイツ在住ジャーナリスト)
持続可能性やオーガニック運動は、欧州発の「緑の思想」とでもいうものが影響しているようだ。1960、70年代にアメリカで活躍したアラン・チャドウィックというイギリス人園芸教育家がいる。彼の活躍を見ると「緑の思想」がドイツ、イギリスを経由してアメリカに伝わった構図が浮かび上がる。このほど、チャドウィックについての論文をまとめた西村仁志さんと「緑の思想」について話した。4回にわたってお送りする。第1回目はアメリカ社会そのものについて考える。(対談日2020年5月21日)
4回シリーズ 長電話対談 西村仁志×高松平藏
■欧州からアメリカへ伝播する「緑の思想」■
第1回 アメリカ社会の肌触りとは?
第2回 頑固じいさんに若者が心酔した
第3回 ドイツから米国へ、まるで大河ドラマ
第4回 若者の反抗から「持続可能性」へ
論文を何度も読み返した理由
高松:園芸家アラン・チャドウィックの論文、何度も読み返しました。
西村:ありがとうございます。
高松:読み返した理由というのは、自分にしっくりこなかったからなんです。チャドゥックの活躍について、具体的なイメージが浮かばなかった。その理由のひとつは、私がアメリカに行ったことがないということ。「社会の肌触り」のようなものを知らない。
西村:なるほど。
西村 仁志(にしむら ひとし)
広島修道大学人間環境学部教授。京都YMCA勤務を経て、1993年個人事務所「環境共育事務所カラーズ」を開業。現在も代表を務めている。自治体や企業、NPO等の環境学習・市民参加まちづくりのコーディネートや研修会の企画運営などを行ってきた。同志社大学大学院総合政策科学研究科博士課程(前期)修了。博士(ソーシャル・イノベーション・同志社大学)。2012年より現職。アメリカ・ヨセミテ国立公園へは1995年以降毎年通っている。
2018-19年、一年間にわたり在外研究でUCサンタクルーズ滞在。この時の成果として執筆した論文「アラン・チャドウィックの菜園プロジェクトとカリフォルニアのオーガニック運動への影響」(広島修道大学学術リボジトリ PDF閲覧可能)が今回の対談のきっかけ。著書に「ソーシャル・イノベーションとしての自然学校: 成立と発展のダイナミズム」など多数。1963年京都生まれ。
西村さんが、園芸家アラン・チャドウィックとオーガニック運動についてまとめた論文。PDF閲覧可
高松:ただ何度も読んでいると、イギリス人のチャドウィックが欧州、特にドイツ発の「緑の思想」のようなものをアメリカへ持っていったような構図が浮かびあがった。それで西村さんとお話してみたいと思ったんです。
西村:はい。
高松:でもね、チャドウィックの話をする前に、まず彼が活躍した「アメリカ社会の肌触り」を少し話したいなと。
高松平藏(たかまつ へいぞう)
ドイツ在住ジャーナリストで当サイトの主宰者。「地方都市の発展」がテーマ。著書に「ドイツの地方都市はなぜクリエイティブなのか」など。
最新刊は「ドイツのスポーツ都市 健康に暮らせるまちのつくり方」 (2020年3月)。スポーツに対する関心はもともと薄かったが、都市を発展させているひとつに「スポーツクラブ」があることに着目。スポーツの社会的価値を展開している様子を見て、著書につながった。また、同書ではスポーツ・余暇・運動インフラとしての森にも着目しているが、その背景にはドイツの「緑の思想」とでもいうものがある。これが西村さんの論文に興味を持ったきっかけ。
2020年11月末に新著「ドイツの学校には なぜ 『部活』 がないのか」が発売される。1969年生まれ。プロフィール詳細はこちら。
著書「ドイツのスポーツ都市」(学芸出版)
メディアで紹介していただいたり、たくさんのコメントなどもいただいている。こちらに詳細あり。
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西村:わあ、難しそう。
高松:ふふふふ、すみません。私の場合「ドイツ社会の肌触り」は外国人としてですが、ある程度解っています。西村さんは1年滞在して、論文をまとめられましたね。
西村:昨年、カリフォルニア大学サンタクルーズ校(以下、UCサンタクルーズ)に在外研究へ行きました。
サンタクルーズの毎日
高松:地図を見ると、サンタクルーズはシリコンバレーのあるサンノゼから山を越えた太平洋に面した街ですね。夫人の和代さんもご一緒だったとか。現地でどんな毎日でした?
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