
バイエルン州のユーディット・ゲルラッハ保健相は、コロナ禍での経験を踏まえ、州が将来のパンデミックに「より良く備えている」と述べた。2020年3月12日に州内で初のコロナ死者が確認されてから5年が経過した。
具体的な備えとして、ゲルラッハ氏は以下を挙げた:
- パンデミック時に設置した防護具・医療機器の中央倉庫の継続運用
- 感染リスクの高い集団向けの衛生・防護対策の再利用可能性
- ウイルス監視システムの強化(下水の系統的検査、約100の医療機関によるデータ収集)
州政府はパンデミック対策の更なる検証にも前向きだが、既に多くの司法判断や州議会の調査委員会による検証が行われていると指摘。現在のインフルエンザ流行に関しては、コロナ禍とは状況が異なるとして、公共交通機関でのマスク着用義務などの強制措置は不要とした。(エアランゲンの地方紙:2025年3月10日付より)
【解説】
■ドイツに国や自治体が市民の生活に不可欠なサービスを予防的に作る考え方「生存配慮」という概念がある。これは国や自治体が水道、医療、教育など市民の生活に不可欠なサービスを予防的に提供する考え方だ。バイエルン州の取り組みは、それをよく反映している。
■ 私は日独を見ながら過ごしたコロナ禍の数年だったが、パンデミック対策は医療・科学・政治をどう組み合わせるかがカギ。その組み合わせ方に国の権力の使い方の違いがよく見えた。
■ 昨年、私が住むエアランゲンは財政面で課題が起こった。市長は地元紙の取材で「(現在大変ではあるが)コロナの時は人命がかかっていて、もっと大変だった」という趣旨のことを述べていた。日本でも首長さんや経営者など、責任ある立場の方はこの時期ご苦労があっただろう。それだけにパンデミックに学んだことを未来への備えに繋げる必要がある。日本の防災対策のように、平時からの準備が重要だ。
(2025年3月12日 高松 平藏)
参考:
「日本と世界の課題: ウィズ・ポストコロナの地平を拓く」(NIRA総合研究開発機構 2022年)にもコロナの体験をどう考えるべきか一文を寄せた。

高松 平藏 (たかまつへいぞう)
ドイツ在住ジャーナリスト。地方の「都市発展」がテーマ。プロフィールの詳細はこちら。執筆・講演依頼などはこちら。このサイトの運営者