
バイエルン州北部の「フランケン地方」は外国人観光客の誘致に成功している。2024年の宿泊数は357万泊とコロナ禍前の2019年を上回った。中でもオランダからの観光客が49.2万泊と最多。米国からも33.3万泊と堅調な回復を見せている。近隣諸国ではオーストリアからの客足も根強く、イタリアからの旅行者も11.9%増と目覚ましい伸びを示した。
アジア市場では中国が42.8%増と大きく回復したが、2019年の水準には及ばない。日本からの観光客も33.8%増と回復傾向にあるものの、2019年の約半分にとどまる。
フランケン観光協会は、アジアからの誘客に向けて積極的な活動を展開。日本と韓国でプレスイベントを開催し、フォルヒハイムのビールをアピールした結果、日本の旅行カタログにフォルヒハイムが掲載されるなど成果を上げている。外国人観光客の宿泊数はコロナ禍前の水準を超え、地域経済に活気を取り戻しつつある。(エアランゲンの地方紙:2025年2月15日付より)
【解説】
■ここ1、2年の報道では観光客回復を歓迎する論調が目立つ。この記事もそうだ。しかし観光業は、あくまでも地域社会の強固な基盤の上に成り立ち、地域資源のごく一部を経済資源に変換するものだ。オーバーツーリズムは、このバランスを崩す典型例だ。地域経済における観光業の比率は、過度に高めるべきではない。「気が向いたらどうぞ」程度の距離感が望ましい。
■オーバーツーリズムの一因として「セルフィ・ツーリズム」が挙げられる。体験よりも「自撮りと拡散」に注力する傾向は、新興国の旅行観に見られる特徴だ。かつてのバブル期の日本人観光客も、欧州とは異なる旅行観を持ち、ブランド品を買い漁る傾向が強かった。観光地側は「ツーリストを選ぶ」「ツーリストの行動を誘導する」といった視点も重要になるだろう。
■ コロナ禍で観光業が受けた打撃は大きいが、オーバーツーリズムはコロナ前にも問題になっていた。それだけに、よりスマートな観光経済戦略が必要だ。(2025年2月26日 高松 平藏)
高松 平藏 (たかまつへいぞう)
ドイツ在住ジャーナリスト。地方の「都市発展」がテーマ。プロフィールの詳細はこちら。執筆・講演依頼などはこちら。このサイトの運営者