2025年1月2日 文・高松 平藏(ドイツ在住ジャーナリスト)
2024年、多くの方々とオンラインで対話を重ね、また円安にもかかわらず、ドイツを訪れてくださる方が例年以上に多く、私が住むエアランゲン市の町を歩きながら対話を行った。
これらの機会は日本社会の「現在の肌触り」を感じ取る貴重な機会となった。
対話を交わした方々は、各分野で卓越した仕事をされ、広い視野を持っていらっしゃる。それにしても彼らが課題と感じていたり、ご苦労されているところを総合すると、日本社会に必要なのは「常識」や「前提」を見直すプロセスだと強く感じた。
例えば、部活動の地域移行という課題。ここでは「スポーツとは何か」「社会におけるスポーツの役割は何か」といった根本的な議論がほとんど見られない。
同様に、「まちづくり」や企業の持続可能性といったテーマでも、日本で当然視されている価値観や経済システムが無自覚のまま議論が進んでいる。例えるならば、応用研究に相当する議論に注力するあまり、基礎研究に当たる部分が脆弱になっているのだ。
この認識を踏まえ、2024年は「答えより問い」を意識した活動に取り組んだ。2025年も引き続き、執筆や講演活動に反映していきたい。(了)
以下、「答えより問い」を意識して行った主な仕事:
- 【連載】【高松平藏コラム】ドイツの地方発、都市哲学に見る持続可能性
「持続可能性と都市」をテーマに、ドイツの取り組みを紹介するだけでなく、その根底にある価値観や哲学に焦点を当てたコラム連載をサステナブル・ブランドさんのサイトで開始した。
- 【書籍】名古屋学院大学の「ストック・シェアリング」研究プロジェクトの成果本が出版された。私も第9章を執筆する機会をいただいた。「ストック・シェアリング」は従来の「減価償却型」社会から、時間とともに価値が増える「増価蓄積型」社会への転換を提案する研究。日本の地方再生や持続可能な都市づくりに新たな視点を提供できると思う。
- 【講義】一橋大学での講義では、「ドイツのコミュニティ」の背景を提示し、日本のコミュニティ議論の前提を再考する機会を提供できたと思う。
(講義録:「市民社会」ドイツの背景を学ぶ 自由で活発なコミュニティが成り立つ理由とは?)
- 【記者会見型講義】「スポーツを地域のエンジンにする作戦会議」の共著者、有山篤利さん(追手門学院大教授)教授の学生さんを対象に「記者会見型講義」を実施。これは学生さんが拙著を読んで、記者会見さながらに私に質問をぶつけるというもの。この方式は過去にも実施したことがあったが、「前提」「常識」とは何かというところまで到達しやすい。
- 【動画】有山さんとスポーツ文化に踏み込んだ、「ありへーのスポーツカフェ」という動画の配信を秋から始めた。
また、エアランゲンにお越しになった方の一部の対話は対談記事として当サイトに掲載した。
- 守山市前市長 宮本和宏さん「日本の元市長が見たヨーロッパ」
- 美濃加茂市長 藤井浩人さん「ドイツ地方都市で、対話と民主主義について考えた」
- 吉備国際大学 講師 大西正泰さん「越境の意義と都市の質」
著書紹介(詳しくはこちら)
ドイツの「地域社会」がどういうふうに成り立っているか?
執筆者:高松平藏(たかまつ へいぞう)
ドイツ在住ジャーナリスト。エアランゲン市(人口約12万人 バイエルン州)を拠点に、地方の都市発展を中心テーマに取材、リサーチを行っている。執筆活動に加えて講演活動も多い。 著書に「ドイツの地方都市はなぜ元気なのか」「ドイツの都市はなぜクリエイティブなのか」など。当サイトの運営者。プロフィール詳細はこちら