12月10日に発表された、ミュンヘン連邦軍大学の調査によると、ドイツにおけるクリスマスはますます宗教色が後退し、世俗化が進んでいることが明らかになった。一方で、家族や愛する人と過ごす落ち着いたプライベートな時間として捉える人が多くなっている。
2024年12月26日 文・高松 平藏(ドイツ在住ジャーナリスト)
信仰、教会、宗教がクリスマスの中心と考えている人は少ない
調査結果によると、わずか13%の回答者が信仰、教会、宗教をクリスマスの中心だと感じている。
家族(73%)、静けさ(64%)、美味しい食事(60%)が上位を占めている。
クリスマスミサへの参加は16%。パンデミック前の2019年(24%)から大幅に減少している。
クリスマスに対する自己と他者への認識の差があることも明らかになった。
54%が他の人々は経済的に無理をしていると考えているが、「自分が無理をしている」と感じているのは11%のみだ。
孤独感についても同様で、53%が「他人は孤独を感じている」と思う一方、「自分は孤独だ」と感じている人は約10程度だ。
クリスマスといえば、社会的な連帯感が高まる時期だ。29%が「他の人々は連帯が強い」と考えているが、自分自身については14%しか感じていない。
クリスマス文化と現代社会
クリスマスに関する知識は依然として高いレベルにある。
60%がドイツ語の「アドベント(待降節)」が元々「到来」を意味することを知っていた。これはキリストの降誕(クリスマス)を待ち望む期間であり、神の子の到来を記念するための準備期間を指す。
57%がヘロデ王をベツレヘムの幼児虐殺と関連付けることができた。これは、新約聖書のマタイによる福音書に記されている出来事で、ヘロデ王がイエスの誕生を恐れ、ベツレヘムの2歳以下の男児を殺害したとされる物語である
現在の赤・白を基調にしたサンタクロースの決定的な普及は、コカ・コーラのキャンペーンによるものだ。これを知っていたのは57%だった。
それは19世紀の都市化で始まった
この調査結果は、長年言われていたことを改めて数字で示された形で、それほど驚きはない。
クリスマスの歴史を簡単に述べると、4世紀半ば冬至とイエス誕生を結びつけることで、キリスト教の公的行事になった。18世紀から19世紀にかけて、啓蒙思想や工業化が起こり都市化が進む。この時、公的行事と私生活が分離し、「愛で結びついた(核)家族」で祝うことが進む。西欧の「クリスマスは家族の時間」はこの時確立した。世俗化の始まりである。
また外国系の市民が増え始めた21世紀のはじめ、キリスト教以外の市民が「家族で過ごす愛の日」といった形で受容していることが報じられたことがある。今年はクリスマスツリーを「お祝いのための木」といったように、キリスト教色を強調しない売り方も検討されていたようだ。(了)
著書紹介(詳しくはこちら)
外国系市民とどのように都市を作っているのか?
執筆者:高松平藏(たかまつ へいぞう)
ドイツ在住ジャーナリスト。エアランゲン市(人口約12万人 バイエルン州)を拠点に、地方の都市発展を中心テーマに取材、リサーチを行っている。執筆活動に加えて講演活動も多い。 著書に「ドイ