部活地域移行の議論が活発化しているなか、この1、2年、専門家の方との意見交換、講演などの機会が増えている。そういう中で京都でのパネルディスカッションにパネラーの一人としてオンラインで登壇した。まだまだ続く議論であるが、創造的なものにしていくにはどうすべきかを考えたい。
2023年1月24日 高松 平藏(ドイツ在住ジャーナリスト)
「社会問題」以前に「世間問題」が大きい日本
京都府総合型クラブ交流会(次世代につなぐセミナー)で行われたパネルディスカッションは有意義で、よかった(下に新聞記事あり)。一方、日本での部活の一連の議論を見ていて、オープンに、そして各人が情熱を秘めつつも各人が「ご機嫌さん」の状態で議論を継続できるかが大切だと感じる。
というのも、聞き及ぶところによると、学校そのものが閉鎖的なところも多いということ。それから、スポーツ分野の世界も思いのほか視野が狭いという。
もっとも日本は学校やスポーツのみならず、全般的に、各業界が強靭な「内輪」を作っている傾向が強い。
その分、内側のヒエラルキーも強固で、相互に空気を読み合い、上下関係を常に確認する。これは「社会」ではなく「世間」である。その世間の中で、どこからも大きな文句をつけられない妥当なところが「落とし所」と呼ばれるものではないか。
昨今「社会問題」という日本語は一般的になってきたが、それ以前に「世間問題」が日本にはまだまだあるということだろう。
挑戦的かつ創造的な議論に必要なこと
一般に「創造性」とは異なる価値観や背景のある人との交流で生まれる。すなわち、オープンに、そして情熱をただぶつけ合うことなく、最低限の敬意を払いながら、リラックス(=ご機嫌さん)した議論がカギ。これによって、「スポーツ世間」「学校世間」とでもいうものから離れた、挑戦的かつ創造的な議論が生まれてくるだろう。
この時、どういう「問い」を立てるかが大切だ。これによって議論の質や方向性が決まるようなところがあるからだ。ジャーナリストの仕事のひとつは、新しい問いや着想を得る刺激を提供することだと考える。幸い、このパネルディスカッションに参加してくださった方のアンケートを見ると、そういう刺激を受けた方もいくばくかおられる印象を受けた。(了)
新聞の写真について:
左から
コーディネーター
炭谷 将史(聖泉大学 人間学部教授)
パネラー
有山 篤利氏(追手門学院大学社会学部社会学科教授)
中村 裕予(南丹市スポーツ少年団本部長)
田邊 航平(龍谷大学 政策学部3年)
敬称略
不鮮明だが、スクリーン左に映っているのが私、高松平藏。
著書紹介(詳しくはこちら)
ドイツのスポーツは「世間」ではなく「社会」の中にある。そして社会を作るエンジンでもある。
執筆者:高松平藏(たかまつ へいぞう)
ドイツ在住ジャーナリストで当サイトの主宰者。 著書に「ドイツの地方都市はなぜクリエイティブなのか」など。
2020年には「ドイツのスポーツ都市 健康に暮らせるまちのつくり方」 (学芸出版 3月)、「ドイツの学校には なぜ『部活』がないのか 非体育会系スポーツが生み出す文化、コミュニティ、そして豊かな時間」(晃洋書房 11月)を出版。一時帰国では講演・講義、またドイツでも研修プログラム「インターローカルスクール」を主宰している。プロフィール詳細はこちら。