ドイツの自治体はウクライナへのロシア軍事侵攻を受けて敏感に反応している。数多くの自治体がウクライナへの連帯を示しているほか、ドイツ都市会議は難民の入国準備を進めていることを明言した。

2022年2月25日 文・高松平藏(ドイツ在住ジャーナリスト)


ドイツ国内の自治体による「ドイツ都市会議」の代表で、ミュンスター市長でもあるマーカス・ルーヴェ氏は2月24日に声明を発表した。

今後数週間で、ロシアの侵略によって影響を受けた地域から、多くの人々が避難することを余儀なくさると予想。ウクライナ近隣諸国、EU、ドイツは人道支援の準備が必要と認識を示した。

また、各都市では受け入れの準備ができていると述べた。その上で連邦政府・州政府は、難民の受け入れ組織をまず作り、地方自治体と緊密に調整する必要性があるとした。

ところで、大陸続きのドイツにおいては、歴史的に見ても、戦争と難民はワンセットだ。第二次世界大戦後も難民の流入で人口が増えた自治体も少なくない。また最近では2015年夏の欧州難民危機は記憶に新しい。筆者のような外国人から見ると、「難民慣れ」をしているようにすら映る。

もちろん、ドイツ国内には難民受け入れ反対の声もあり、摩擦と化することもある。しかし、各自治体が難民を受け入れ、様々な具体的支援を行っている。


自治体、ウクライナへの連帯を示す


2月24日のロシア軍事侵攻を受けて、ドイツ各地でウクライナへの連帯を示す集会や旗の掲揚などが行われている。

筆者が住むエアランゲン市(バイエルン州、人口11万人)でも同日17時半から市役所前の広場でデモが行われた。フロリアン・ヤニック市長は「戦争で避難する人が来るのは必至。保護を求める人たちの受け入れ準備はできている」と述べた。

一方、同市はロシアのウラジミール市と姉妹都市関係がある。姉妹都市関係の市担当者によると、ウラジミールでも息子が戦争に巻き込まれることを恐れている母親がいるなどの困惑があるという。そして、姉妹都市関係についても混乱がおこるだろうと予測している。

また、先週17日にはヤニック市長はウラジミール側とオンラインでの対話も行っていた。(了)

エアランゲン市は自前の火力発電所をもち、数年前からその煙突のライティングを行っている。バレンタインデーなどは赤色の光をあてるなど、時節に合わせたライティングを行うことがある。24日の夜はウクライナの国旗の色のライティングを行い、連帯を示した。(写真:エアランゲン・シュタットベルケ)

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地方自治体の運営に光る、国際感覚 


執筆者:高松平藏(たかまつ へいぞう)
ドイツ在住ジャーナリストで当サイトの主宰者。 著書に「ドイツの地方都市はなぜクリエイティブなのか」など。
2020年には「ドイツのスポーツ都市 健康に暮らせるまちのつくり方」 (学芸出版 3月)、「ドイツの学校には なぜ『部活』がないのか 非体育会系スポーツが生み出す文化、コミュニティ、そして豊かな時間」(晃洋書房 11月)を出版。一時帰国では講演・講義、またドイツでも研修プログラム「インターローカルスクール」を主宰している。プロフィール詳細はこちら