
井澤:名古屋市内の熱田神宮の参拝なんかもそう。ステイタスに入れる領域が決まっているそうです。ムラ的な感じがないわけではありませんが、金としてじゃなくて名誉。一種の社会的責任を全うしているようなところが評価される。
高松:ベーシックインカムが本当に機能するかという議論はおいておきますが、もし、導入されると、公共への貢献をする人が増える可能性もある。現状では「そういう活動をしたいが、できない」なんていう人も多いはずです。ベーシックインカムは公共への貢献する人への評価というのをどこかで関連づけたほうがいいように思います。
変化もある、日本の「公共」
井澤:「パブリック=お上」という日本での考え方も少し変わってきました。たとえば国交省が2020年6月5日から11月30日まで道路占用許可の規制を緩和しています。
高松:もう少し詳しく教えてください。

井澤:占用許可というのは道路管理者、つまり国や自治体が許可を出す。使用許可は警察が出す。例えば、パレードなら警察の使用許可だけで済みますが、カフェテラスなら道路を使用し、かつ占用するので警察と役所の2つの許可がいるんです。
高松:そういう煩雑さをシンプルにした?
井澤:そうです。国交省が警察の了解を得ているということになり、国・自治体からの許可だけで、路上で客席を設置してもよい。
高松:道路をいろいろ使えそうです。
井澤:たとえば、密をさけながらテイクアウトの屋台などもできる。
高松:なるほど。
井澤:公共空間、道路空間への対応がかわりつつあるなか、コロナ禍が加速させている動きだと考えています。コロナがおわったからといって後戻りはしないでしょう。

高松:「道路の使い方」という意味で、名古屋で先例はありますか?
井澤:限定的ですが、オープンカフェを2000年からずっとやっています。他へは広がっていないですけど。
オープンライブラリーは公共空間の質を問う
井澤:エアランゲンの市街地にカフェがあるのは言わずもがなですが、歩道上に本棚があるのには驚きました。
高松:いわゆる「オープンライブラリー」ですね(写真下)。電話ボックスより一回り小さい本棚です。歩行者ゾーンにベンチとともにおいてある。

井澤:あのそばに、露店型の自転車修理のお店(写真下)があったのも面白い。
高松:「自転車の町※」ですからね(笑)。店主は、「緑の党」のメンバーでもあり、長年あそこで店を構えていらっしゃった。最近、定年退職で若い人に変わっています。それからオープンライブラリーについていえば、公共空間における信頼性がないと成り立たないものだと理解しています。
※自転車の町:エアランゲン市は1970年代末から自転車道の整備を開始。先駆的に自転車道が作られた都市のひとつ。長電話対談 第2回で自転車道についてふれていきます。
井澤:というと?

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