朝日新聞2021年2月6日付に拙著「ドイツの学校には なぜ『部活』がないのか」(晃洋書房)の書評が掲載された。評者は東京大学教授の本田由紀さん。著者としてはとても嬉しい内容だ。書評の紹介にかこつけて、蛇足めいたものを書いておく。
2021年2月8日 文・高松平藏(ドイツ在住ジャーナリスト)
ん?部活の本?
同教授による書評は下の新聞切り抜き画像。
私は地方の「都市の発展」に着目して取材・調査・観察を続けている。スポーツに関心を持ったのは、2000年代半ば。非営利組織について調べるとスポーツ分野の非営利組織(=スポーツクラブ)がやたらに多いことがわかった。これがきっかけだ。
言い換えれば、拙著はドイツの都市社会の構造について、スポーツを切り口に書いたかたちだ。書評では、そのカギの部分を端的に抽出して下さった。
「批判的なことを申し上げれば・・・」
参考までに以下に別の方が書いて下さった2点を紹介しておく。
まずは国定勇人さん(前三条市市長)による感想。ご自身のブログに書いてくださったのだが、途中で「批判的なことを申し上げれば・・・」というくだりがある。その先は、私の狙いをズバリ言い当てられた。この著書はスポーツを通して、地域社会について書こうとしたものだからだ。
敢えて批判的に申し上げれば、何故こんなに狭い分野のタイトルにしてしまったのだろうか…これでは、読者が教育や部活、スポーツに関心のある方しかこの本を手にしないのではないか…と、そんなことまで気にしてしまうくらいに、個人と社会との関係、コミュニティの個人(及び社会)に対する寄与度、個人(及び社会)の政治行政に対する捉え方(≒地方分権の成り立ち)などが随所に散りばめられた、何らかの社会的活動に携わっている方々には是非読んでいただきたい
この地に尽くす!〜国定勇人(くにさだいさと)の日記〜より
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次に仁科太一さん(東京学芸大学修士課程)による書評を紹介する。
同氏は演劇教育を勉強されていて、その視点から『スポーツも文化も日本は同じ問題を抱えている』ということを指摘されている
学校の具体的な現状について私はわかりかねるが、日独の基本的な社会構造から紐解くと、スポーツも文化も、またそれ以外の分野でも共通の本質的な問題を抽出することはできると思う。
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いずれにせよ、著作は出した段階で読者のものであり、読者にとって、刺激となれば嬉しい。
そして感想から書評に至るまで、著者にとっては気になるものであり、場合によっては手厳しいものもある。それでも強い関心を持っていただ証左であり、嬉しいものだ。そしてここからまた触発されることもある。(了)
著書紹介(詳しくはこちら)
執筆者:高松平藏(たかまつ へいぞう)
ドイツ在住ジャーナリストで当サイトの主宰者。 著書に「ドイツの地方都市はなぜクリエイティブなのか」など。
2020年には「ドイツのスポーツ都市 健康に暮らせるまちのつくり方」 (学芸出版 3月)、「ドイツの学校には なぜ『部活』がないのか 非体育会系スポーツが生み出す文化、コミュニティ、そして豊かな時間」(晃洋書房 11月)を出版。一時帰国では講演・講義、またドイツでも研修プログラム「インターローカルスクール」を主宰している。プロフィール詳細はこちら。