コロナ危機下、オンラインでのコミュニケーションが増加した。どのような変化あったか書きとどめておきたい。
2020年12月3日 文・高松平藏(ドイツ在住ジャーナリスト)
非公式のちょっとした会話
コロナ禍でオンライン会議がぐっと増えたが、その時間が全体的に長くなったとこぼす知人がいた。理由は廊下などで行われるスモールトークの内容が会議中に加わるからだ。
それで思い出したのが、ドイツのある大手企業。
リモートオフィスが増えた4月ごろに報じられたのは、就業時間中にオンラインのコーヒータイムを設けたということだった。
日本のような「仕事のあとの一杯」という習慣はドイツにない。それにしても、オフィスでの非公式の「ちょっとした会話」は意外にも重要で、「人は必要としている」ということだろう。
オンラインを受け入れる
一方、オンラインが受け入れられてきているのも最近実感した。
7月ごろ、親しい友人たちと「集まりたいね」という話が出たので、オンライン飲み会を提案した。友人たちの年齢は50前後。私の案は冗談と思われたようで、すぐに却下。はなっから受け入れられなかったのだ。
ここに来て11月からまたもやコロナ禍で制限がかかる。
「オンラインで会わないか」と再び2人の友人に持ちかけると「いいアイデア!」と7月の反応とは全く違う。
結果的に筆者も含めて妻や夫が加わる。画面には3組の夫婦が各自宅のソファに並ぶ。それぞれがお茶やクッキーをつまみながら、3時間近く談笑した。
この手のことは自治体でもあった。
4000人の町で『バーチャル市民会議』が行われると昨日地方紙で報じられた。市長は以前からオンラインでの会議を考えていたそうだが、コロナ危機下の制限により一気に実現したかたちだ。
「SNS全盛、若者はリアルに集まらない」は嘘だった?
こんな変化を見る一方、思い出すのが、SNS普及が顕著になったころだ。
「若者はリアルに集まらなくなった」
とよく言われた。
しかし、SNSのせいでクラブやディスコが潰れたという話は聞かない。これらの経営危機はコロナ禍の制限によって出てきた。そして3月にはコロナ危機下でも野外で集まる「コロナパーティ」が問題になった。若者もリアルに集まりたいのだ。
通信や交通の技術進展によって、人々のコミュニケーションのあり方は常に変化する。特に今年はコロナ禍が大きな環境変化を引き起こした。
個人的なことをいえば、私も日本の仕事関係の方とオンラインで打ち合わせする機会が増えた。日本向けの講演・講義をドイツの自宅からすることもしばしばだ。
引き続き、観察していきたい。(了)
著書紹介(詳しくはこちら)
執筆者:高松平藏(たかまつ へいぞう)
ドイツ在住ジャーナリストで当サイトの主宰者。 著書に「ドイツの地方都市はなぜクリエイティブなのか」など。
2020年には「ドイツのスポーツ都市 健康に暮らせるまちのつくり方」 (学芸出版 3月)、「ドイツの学校には なぜ『部活』がないのか 非体育会系スポーツが生み出す文化、コミュニティ、そして豊かな時間」(晃洋書房 11月)を出版。一時帰国では講演・講義、またドイツでも研修プログラム「インターローカルスクール」を主宰している。プロフィール詳細はこちら。