2020年10月12日 文・高松平藏(ドイツ在住ジャーナリスト)
行列にはいろいろある。
日本でも戦後の物資不足のなかでできた行列、消費社会を象徴するかのような、新作ゲーム発売日に見る行列。時代を反映するかのような行列が散見できるのだ。
さて先日の日曜、筆者が住む町の市街地のカフェへ、モーニングを食べに行った。「休日のちょっとした贅沢」である。
開店時間9時ぴったりに行くと、なんとか席があった。あとは予約で埋まっている。時間がたつにつれ、予約客が次から次へとやってくる。
ドイツの市街中心地は飲食店のほかに小売店も集中する。歩行者ゾーンになっている町も多く、広場では種々の催しもある。「消費」「飲食」「社交」「余暇」などの多機能空間だ。加えて、なんらかの主張を示威する集会やデモもよく行われることから「公共の言論空間」でもある。この多機能性が「滞在の質」につながる。
小売店は市街地の滞在の質を支える重要なものだ。ところがコロナ禍で小売店が軒並みピンチ。理由はネットで購入する人が増加したことだ。以前からこれは問題になっていたが、コロナ禍で拍車をかけた。
しかし飲食に関しては、筆者が住む町を見る限りよく流行っている。
店内マスク着用やテーブル数を間引き、屋外席の拡大、客の氏名・連絡先の登録等の対策をしている。
ひるがえって、1時間あまりゆっくり朝食を楽しんだあと、カフェを出た。向かいの別のカフェでは行列ができていた(タイトル写真)。しかも距離をとっている。これはコロナ禍の行列だ。人は集まりたいのだ。それが公共空間である中心市街地でコロナ禍でも表れる。(了)
高松平藏の著書「ドイツのスポーツ都市 健康に暮らせるまちの作り方」
中心市街地は健康・社交のインフラ。
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