2020年9月30日 文・高松平藏(ドイツ在住ジャーナリスト)


ドイツの自治体での議論の中で物議を醸し出しているテーマのひとつがクリスマス市場だ。

11月末からクリスマスシーズン中に菓子やクリスマスの飾りなどを売る屋台、それに移動遊園地が並ぶ。これがクリスマス市場だ。あえて言えば、新年の神社の参道に似ているかもしれない。「毎年恒例」で「屋台が並ぶ」ということが共通点だ。

ドイツの場合、歴史的な市街地が町の中心地になっており、その広場で行われることも多い。

だが今年はケルンなどは早々と市場の開催をキャンセルした。一方でニュルンベルクは、導線を一方通行にし、距離を保つ。訪問者を滞留させない環境づくり。アルコールの禁止。こういった衛生コンセプトを作り、開催したい構えだ。

11万人の都市、エアランゲン市(バイエルン州)のクリスマス市場。



少し古い数字だが、クリスマス市場はドイツ全国で30~50億ユーロ規模の経済効果がある(20214年)。ドイツの催事業界にとって年間の3分1から半分程度をクリスマスで稼ぐ。観光地でもあるニュルンベルクなどは、市場は観光資源としても大きい。

今年は国外からの客がほぼないと思われるが、それにしても業界側にとっても開催が望まれているだろう。

一方、観光地ではない都市の場合、市民たちが友人や家族とこぢんまりとホットワインを飲みながら歓談するような場所や機会になっている。それだけに「恒例」のものが欠けると物足りない。

ところで、日本の年末年始の風景はどうなるだろうか。(了)


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クリスマス市場は歩行者ゾーンで行われる


執筆者:高松平藏(たかまつ へいぞう)
ドイツ在住ジャーナリストで当サイトの主宰者。 著書に「ドイツの地方都市はなぜクリエイティブなのか」など。 最新刊は「ドイツのスポーツ都市 健康に暮らせるまちのつくり方」 (2020年3月)
一時帰国では講演・講義、またドイツでも研修プログラム「インターローカルスクール」を主宰している。プロフィール詳細はこちら