2020年3月22日撮影、ドイツ・エアランゲン市内の緑地に貼られたビラ。

コロナ危機でドイツも外出制限がとられている。筆者が住むエアランゲン市(バイエルン州)では21日から公園なども使用禁止になった。しかし依然、余暇空間や森が最後の健康維持インフラとして機能している。

2020年3月22日 文・高松平藏(ドイツ在住ジャーナリスト)

■外出制限強化、公園も閉鎖

ドイツの各地域には数多くのスポーツクラブがある。NPOのような組織で、いわば市民スポーツの拠点だ。筆者が住むエアランゲン市(人口11万人)にも約100あるが、3月13日から活動が休止。学校や幼稚園も閉鎖。自宅で仕事をする人も増えた。

当初は公園などもオープンで、子供たちがたくさんいた。しかし、21日からバイエルン州はより強い外出制限をとる。

平日、私は運動不足解消のために室内でエアロバイクを使っている。しかし日曜日は天気もよかったので、先週に引き続き森を走った。 幸い、単独や家族での散歩、ジョギングは禁じられていない。 (参考 一週間前の記事: コロナと健康インフラとしての森

市内の公園は3月21日から閉鎖。この公園も普段はたくさんの子供たちが遊んでいる。(3月22日撮影)

■家族連れが多かった

森には先週と同様、ジョギング、ノルディックウォーキング、犬の散歩などで老若男女が結構出てきていた。先週との違いは、親子連れが目立ったことだ。

ベビーカーを押しながら散歩する若い夫婦、小学生ぐらいの子供たちとサイクリングをするお父さんなどなど。自宅に長くいると、運動不足のみならず、精神的にも厳しい。公園も閉鎖された今、最後に残るは余暇・緑地空間や森といったところだろう。

しかし、余暇・緑地空間のところには、人との距離を取ることを促す張り紙があった。 また、拙宅から森までのあいだに、余暇空間や遊歩道もある。そのほとんどはけっこうな広さがあるのだが、狭いところですれ違う場合、お互い両端いっぱいに離れ、距離を取ろうとする光景も見られた。

単独のジョギングや散歩などは禁じられていない。(2020年3月22日 エアランゲン市内の森)

■プール閉鎖、市長もシューズ購入

地域密着型スポーツクラブの様子、健康インフラとしての余暇空間や森についても言及している。(書影をクリックするとアマゾンのページへ飛びます)

エアランゲンは市街地を囲むように森が配置される構造で、かつアクセスしやすい。

日本の地方へ行くと、作り込んだ公園などがあるが、自動車を飛ばさねば行けないところも少なくない。都市計画の観点からいえば、「生活の質」や環境問題といった点で最適な構造ではない。むしろ、せっかく公園があるのに残念な配置だ。この点、エアランゲン市はベビーカーを押して、気軽に散歩に出かけることができる。このあたりのことは拙著ドイツのスポーツ都市 健康に暮らせるまちのつくり方でも言及している。

ところで、数日前エアランゲン市の市長は「ジョギング用のシューズを購入した」とSNSに投稿した。同市長はもっぱら水泳で運動不足を解消しているが、プールも閉鎖。コロナ対策で毎日12時間追われている。そんな中でのシューズ購入だった。そして、地域経済を考えて地元のスポーツ用品店で購入したことも、しっかり明言している。このあたりは、いかにも政治家だが、こういうことは大切だ。

コロナ危機による外出制限が、今後さらに強化され、ジョギングや散歩もできなくなる可能性もある。しかし、現時点では余暇・緑地空間や森が「生活の質」「健康インフラ」として機能しているかたちだ。来週も状況が許せばレポートしたい。(了)

執筆者:高松平藏(たかまつ へいぞう)
ドイツ在住ジャーナリストで当サイトの主宰者。 著書に「ドイツの地方都市はなぜクリエイティブなのか」など。 最新刊は「ドイツのスポーツ都市 健康に暮らせるまちのつくり方」 (2020年3月)
一時帰国では講演・講義、またドイツでも研修プログラム「インターローカルスクール」を主宰している。プロフィール詳細はこちら